施肥窒素量と作物生育
アンモニア態窒素と硝酸態窒素
一概に無機態窒素と言っても、窒素には土壌中で存在する際に異なる形があり、その性質もさまざまである。
まず、化成肥料を畑に施した際は、アンモニア態窒素の形で存在していることが多い。土壌は-の電化を帯びている一方、アンモニア態窒素は+の電化を帯びているため土壌から流亡しにくい側面がある。
このアンモニア態窒素は、土壌中の硝化菌と呼ばれる一群の最近によって、アンモニウムイオン(NH4+)が亜硝酸イオン(NO2-)を経由して硝酸イオン(NO3-)へと分解されていく。
ここで、各窒素の組成式を見ていただければ明らかなように、アンモニウムイオンは+に荷電されており、硝酸イオンは-に荷電させている。つまり、硝酸態窒素は土壌と同じ-に荷電されており流亡されやすいということがわかるであろう。
各作物ごとに必要な窒素の種類
水稲は生育にアンモニア態窒素を好む作物である。水田は田んぼに水を張って栽培するため、土壌が酸素が少ない還元状態となっている。つまり、硝化菌の働きによってアンモニア態窒素を分解できないため、施肥した窒素はアンモニア態として田んぼに存在することとなる。それでも、稲が問題なく生育できるのはこのアンモニア態窒素を吸収できるためである。
一方、畑で栽培される野菜はこのアンモニア態窒素が多いと障害がでることがある。一般的には25mg/100g以上は過剰とされている。
通常、しっかりと耕されており、水が溜まっていないような畑では、アンモニア態窒素は、微生物の力を借りて硝酸態窒素まで分解されることとなる。そこで、畑の土壌ではこの硝酸態窒素濃度を測定することで、作物の生育に必要な肥料成分が土壌中に足りているのかを知る手掛かりとしている。
無機態窒素と土壌成分
一方、近年pHが低い酸性土壌であるがECが高い畑がハウス栽培をしている農家を中心に増えてきている。pHやECの説明は別の記事で詳しく述べるが、通常、pHが低いということは、土壌中に溶けている塩基類が少ないことを意味する。土壌に溶けている塩基類の主なものとしては炭酸やカルシウムである。そこで、この根本原因をしらなければここで石灰を投入してしまうが、注目していただきたいのはECが高いということ。ECとは、電気伝導率の略でこの値が高いほど、土壌の肥料成分は多いということを意味する。塩基類が低ければECも低くなるはずであるが、この圃場のECは高い。
各作物の硝酸態窒素濃度
ホウレンソウ:収穫時の残存無機態窒素は最低でも5mg/100g必要である。それ以下だと、収量の低下につながる。
きゅうり:栽培期間を通して無機態窒素は10mg/100g必要であり、これ以下だと収量が低下する。つまり、きゅうり栽培においては、土壌中の窒素濃度を一定に保つような施肥管理が必要となるので、元肥主体というよりは追肥主体の肥料管理をしていく必要がある。肥料切れになると、花が落ちるなどの生理現象が発生する。これは、ピーマン等他の果菜類でも同様のことがいえる。
無機態窒素施用の目安は下記の表を参考にして、自身の土壌診断記録と比べてほしい
アンモニア態窒素 (mg/100g) |
硝酸態窒素 (mg/100g) |
|
少ない | 0.5mg以下 | 4mg以下 |
適正 | 1から5 | 5~15 |
多い | 5から10 | 25前後 |
過剰 | 20以上 | 50以上 |